脳卒中片麻痺のバランス障害について 11年目理学療法士が診るべきポイントを解説

脳卒中のバランス障害について

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脳卒中片麻痺者で必ず挙がる問題点の1つとしてバランス障害があります。

バランスとは?

そもそもバランスって使いやすい言葉ですが、抽象的な言葉です。

少しバランスに関する知見をまとめると

➣身体を平衡に保持する能力

➣質量中心(COM)の投影点を、安定性限界(Stability limit)と呼ばれる支持基底面(BOS)の範囲内に保持する能力

➣自らがうごいた時、また外的な力で動かされた時に、安定性限界の中に身体質量中心を安定させる感覚運動戦略

                                引用元:モーターコントロール第2版

 

➣バランスとは環境条件の変化に応じて、CNS内で統合され、修正された感覚と筋骨格系の複雑な相互作用から生成される

➣BOSの上に垂直に身体のCOMの位置を維持することが含まれる。この条件が満たされた時、人は重力の不安定性の影響に抵抗し、積極的にCOMを移動することができる

                                             Nasher 1993

 

これらを要約してまとめると良いバランスとは

  • 倒れない
  • 良いアライメントを保持できる
  • 安定しながらも動ける

ということができます。

脳卒中片麻痺のバランス障害の考え方

バランスといえば一般的に立ち直り反応や平衡反応をイメージします。

学生時代はそう習ってきました。

実習では、バランス評価と言えばまず立ち直り反応を評価したのは私だけではないでしょう。。。

しかし、臨床に出てからは脳卒中片麻痺者は立ち直り反応や平衡反応が出現しないだけでなく、動作を起こす前から失敗しているということをよく耳にします。

姿勢制御のタイプ

➣STEADY STATE:外乱のない状況で、BOS内に対してCOMをコントロールしている状態

➣PROACTIVE:随意運動によって姿勢が不安定になることを予測し、前もって姿勢を調整する能力(Feed forward APA’S)

➣RAEACTIVE:外乱の後に姿勢を回復する能力(Feedback Reaction)

上記のように分類されます。

その場で止まれること、動作の前後にバランスを調整する機構が人間には備わっています。

 

臨床的に診るべきポイントで分類すると

  • 動作前の構え・姿勢保持・準備活動
  • 動作中のバランスの維持
  • 動作後のバランス修正

に分けることができ、課題の開始前~終了まで全体を評価する必要性があります。

 

脳卒中片麻痺のバランス評価

  • 動作前・中・後の時期
  • 質・量
  • 視診・触診などの主観的な分析と客観的評価

これらの視点で総合的に評価していく必要があります。

 

臨床でよく用いられるバランス評価は決まった項目に従って評価をすすめることが多いです。

代表的なものを挙げれば

  • Functional Balance Schele(FBS)
  • ファンクショナルリーチテスト
  • 片脚立ち
  • Time Up and Go Test(TUG)

などがそれに該当します。

「何秒できたか」「何cm到達したか」「こけそうになったか」「介助は必要であったか」「手を使えば動作ができる」といった量的な評価になります。

これらは、動作中もしくは動作後のバランスの崩れを反映しており、かつ量的な問題を示す評価となります。

 

動作前のバランス障害の捉え方

動作前のバランス障害は問題があったとしても、動く前なので問題として捉えにくいです。

動作前の問題を問題として捉えにくいのはなぜでしょうか?

起立を評価する際、動作開始前に明らかに座れていなかったら座位が問題となると思います。しかし、座れていたとしたら動作を開始することができます。動作が開始してしまえば、目には動作中・後の問題としてうつります。

理由は簡単で動作中・後の方が大きく崩れるからです。

原因としては動作前の問題が大きかったとしても、結果としては動作中・後の問題として現れるというイメージです。

動作前の問題を捉えるためには

  • 動作の開始姿勢はどうか(動き出すために適切な姿勢かどうか)
  • 患者さんが課題を理解しているか(動く前のプラン・プランニングの問題)
  • まずどこから動き始めたか
  • 開始時に活動する筋肉はどうか(正常の運動パターンで働いているか)

を評価する必要があります。

これら運動開始前に外乱を最小限にとどめておくバランス制御機構を

予測的姿勢調整(Anticipately Postural Ajustment:APA’S)

といいます。

 

また、動き出した直後はその問題が反映されやすいので、動作開始直後の問題は動作開始前の問題として捉える必要があります。

[aside実際は動作開始直後は動作開始前の影響を受けるので動作中ではなく、動作前の問題と捉えるべき] [/aside]

 

動作中・後のバランス障害の捉え方

動作中・後の問題を捉える前に、動作前の問題をできるだけ少なくし評価する必要があります。

例えば

  • 開始姿勢を整えたら動きが変化するか
  • 運動開始が容易なように誘導する

などです。

上記のように動作前の状況を変化させ、運動中に変化が起こると動作前の問題が動作中・後に影響を及ぼしていたということです。

 

動作中・後の問題では

  • どのようにバランスをとっているか(頭を大きく動かす、お尻を引いてなど)
  • 自己で修正可能な範囲が分かっているか(安定性限界の理解)

ということが重要です。

 

動作中・後は必ず自分が動いたことによる外乱が生じます。

動作前にできるだけこの外乱を最小限にする制御機構が上記で説明した予測的姿勢調整(Anticipately Postural Ajustment:APA’S)

です。しかし、どれだけ外乱を少なくしようとしても、動こうとした時に必ず人は揺れます。

それを修正する制御機構を

反応的姿勢調整(Reactive Postural control)

といいます。

この両者が協調して働くことで動く最中のバランスの乱れを最小限にすることができます。

動作中・後に生じるバランス問題は後者の反応的姿勢調整が大きく影響します。

 

バランスの乱れをどうやって修正するのか、バランスの修正の仕方も色々あります。

  • 足関節戦略
  • 股関節戦略
  • ステッピング戦略

です。

どれも状況に応じて使っていく必要はあるのですが、特に脳卒中片麻痺の方は特に足関節戦略でのバランス修正能力が欠如しています。

なので、頭を大きくふったり(HAT戦略)お尻を引いたり(股関節戦略)あわててステップを出してしまったり(ステッピング戦略)します。

動作中・後の問題を捉えるためには、どのような戦略でバランスを修正しようとされているかを評価していきます。

 

反応的姿勢調節に関する記事はこちらを参考にしてください。

反応的姿勢調節とは?脳卒中のバランス評価で重要なポイントを解説!

2018.05.14

バランス障害の質的な問題の捉え方

質的な問題の捉え方は視診・触診などの運動分析が中心となります。

その中で

  • 代償動作
  • 運動のパターンや姿勢・アライメント
  • 動作スピード
  • 正確性

を動作前・中・後、全体を通した流れで診ていくことがポイントとなります。

 

バランスの良い動作は全体を通して流れがスムーズです。

途中で運動の軌跡が変わったり(非麻痺側に重心が偏移など)、スピードが急に速くなったり遅くなったりなどがそれにあたります。

局所を診ることも大切ですが、分析の時には全体の流れを診ることも重要です。

 

 

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