反応的姿勢調節とは?脳卒中のバランス評価で重要なポイントを解説!

反応的姿勢調節とは

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今回は反応的姿勢調節について、脳卒中片麻痺のバランス障害に対する評価、治療のアイデアを入れながら書いていきたいと思います。

 

バランスが乱れる要因

まず、なぜバランスは乱れるのでしょうか?

分類すると

  • 自分が動こうとしたことによる内乱
  • 外力が加わることによる外乱

に分けられます。

評価ではセラピストが加えた外乱に対する反応や自分で重心移動できる範囲、リーチなど動こうとした場合の内乱を診ることが多いです。

内乱の概念を広げると、もう少し細かい内容を評価できるかと思います。

 

人は立っている時常に揺れている?

重心動揺計を使用したことがある方はご存知かと思いますが、人は立っている時、止まっているように見えても常に揺れています。

この要因としては、

  • 立位が支持基底面が狭く、重心が高い姿勢であること(二足直立姿勢)
  • 呼吸による胸郭の動きによる重心の偏移
  • その他、心臓など内臓の動きによる重心の偏移

などが考えられます。

しかし、揺れると良いのかと言えばそうではないです。失調症状のように大きく揺れる場合は転倒リスクが高まります。逆にパーキンソン病のようにあまり揺れない場合にも動き出しに繋がらないなど双方問題があると言われています。

身長や足の大きさによっても重心移動の幅は違うので、正常の基準は難しいですが、バランス崩さない範囲で適度に揺れるということや閉眼と開眼の差がないこと(ロンベルグ徴候)などが基準として考えられます。

そのため、重心移動など自ら動こうとする前に、いわゆる静止立位で評価・治療することが重要です。開始姿勢が整わないとうまく重心移動できないので。

例えば

  • 止まっている場合の重心動揺の範囲、方向を評価→揺れの幅(前方は安定しているが、後方にいく際はグラグラしているなど)
  • 呼吸による重心の偏移を評価→呼気・吸気でどこに重心が偏移しているか→吸気は重心が高く後方へいきやすい=吸気時抗重力伸展活動が生じているか、それとも伸展活動が生じなかったり、後方へ突っ張ってしまうなど

です。

手順としては

  1. 接触が外乱にならないようタッチする(練習としてはASIS・胸郭などに触れると重心動揺や呼吸が分かりやすい)
  2. 自分は重心動揺や呼吸を感じることに集中する=動かそうとしない
  3. 両足のつま先・踵の4点の中でどの方向に揺れやすいか、いつもどこにいるか、呼気・吸気の時にはそれぞれどうなるか

などです。

あくまで評価したいのは内乱の部分なので、接触はするが外乱にならない程度でタッチすることが重要です。で、触れるという触診の部分で重心移動や呼吸を評価します。

また、立位で落ち着いて呼吸できているかということは、バランス良く立てているかという指標になります。立っているだけでバランス崩しそうな方は肩に力が入り、呼吸が浅くなっていることが多いです。

 

反応的姿勢調節とは?

反応的なので言葉の通り、バランスが乱れた、崩れた後に生じる姿勢調節となります。

どのような動きで姿勢調整するかと言うと

  • 足関節戦略(Ankle strategy)
  • 股関節戦略(Hip Strategy)
  • ステッピング戦略(Stepping strategy)

です。

Reactive Postural control

脳卒中のバランス障害のポイントはこちらの記事を参考に

脳卒中片麻痺のバランス障害について 11年目理学療法士が診るべきポイントを解説

2018.05.08

 

足関節戦略とは?

足関節・MTP関節でCOM(center of mass)を安定性限界内に取り戻す戦略。動揺が小さく支持面がしっかりしている時に外乱に対して最もよく使われる                  Brown et al.1999,Maki&Mcllroy 1997

 

末梢から中枢へのシークエンス

前方の動揺に対して腓腹筋から筋活動が始まり・ハムストリングス・傍脊柱筋が活性化する

後方の動揺に対して前脛骨筋から筋活動が始まり・大腿四頭筋・腹筋群が活性化する

安定している際に最も多く使われる戦略です。上図を見ていただいても分かるのですが、上半身を積極的に動かせる戦略となっています。ということは、自ら重心移動を行うにはこの戦略を獲得する必要があるということです。

しかし、脳卒中片麻痺の方は立位をとっただけで、お尻が引けていることが多いです。つまり、重心移動を行える状態になく、そこにとどまることで精一杯ということになります。

 

間違えないでいただきたいポイントは、

足関節戦略なので足関節周囲だけを強化・促通すれば良いわけではない 

ということです。

まず、股関節が伸展しないと足関節戦略は使いにくいです。重心移動の際、身体が「くの字」に曲がらず足から上の状態がいわゆる棒状で足を基準として動く必要があります。そのため、足関節周囲の機能を改善すると同時に股関節・体幹機能の改善が必須となります。

円背など股関節・体幹が屈曲位の方でも立っている今の形が崩れないまま足を基準として重心移動できれば足関節戦略です。ただ、元々体幹屈曲位で股関節に対し屈曲モーメントがかかるため、股関節・体幹を保持する上で効率は良くない状況ではあります。

 

股関節戦略とは?

股関節で大きく急速な運動により、COMをコントロールする戦略。より大きく速い外乱に対して使われる。支持面が柔らかかったり、狭い場合に使われる。                      Brown et al.1999,Maki&Mcllroy 1997

 

中枢から末梢へのシークエンス

前方への動揺に対して腹筋群と大腿四頭筋が活性化する

後方への動揺に対して、傍脊柱筋とハムストリングスが活性化する

股関節戦略はバランスが崩れそうとなった時にでる戦略です。BOS内でいうと端に近づいた時に股関節戦略となります。また、大きく速い外乱であれば自分の予想を越えるものであるため足関節戦略では対応できず、股関節戦略が出現します。

股関節戦略は上の図でも分かりますが、上半身重心はほとんど動かず、お尻と頭は逆方向に動いています。そのため、この股関節戦略は積極的に重心移動を行うためのものではなく、そこにとどまるための戦略ということが分かります。

立位をとるということは

  • 作業をする
  • 歩き出す
  • 座り直す

ということを行うためだと考えられます。ということは次の動作にうつる=重心移動が行える必要があります。

そのため、立位では股関節戦略だけではなく、足関節戦略でバランス範囲が広がるように介入していきます。

股関節戦略が全て悪者ではなく、必要な状況に応じて対応できるということが必要となります。

例えば

  • 立位ではこれから動く(重心を積極的に動かす)ということは足関節戦略の方が効率が良い
  • 起立初期では臀部から重心を足部上にのせていく=重心をBOSの端から中心に戻す課題のため股関節戦略が必要

となります。

なので、その課題特性に応じて使い分けれているかを評価します。

ステッピング戦略とは?

外乱によってBOSの外にCOMが移動した時の反応と考えられていたが、現在の研究では、BOSの中にCOMがある場合においても、多くの場面で、この戦略が見られることが分かっている                 Brown et al.1999,Maki&Mcllroy 1997

 

必要な感覚・認知機能は?

主に体性感覚に依存して反応的姿勢調整は行われます。しかし、学習途中であったり、神経学的障害があると、視覚に依存する傾向が増えるとされています。

また、動揺に対し適応や予測の能力を高めるためには、ある程度の注意の能力が必要です。

例えば

適応:外乱を繰り返した場合、反応の強度を減らして(最低限の反応にする)、身体の動揺を減らす

予測:外乱を予測し、構えをつくったり、外乱の大きさや方向に対する予測に基づいて姿勢反応を調整できるようにする

これらを学習していくために注意機能が必要ということです。

 

課題・環境による影響

通常であれば支持面が安定していたり、動揺が小さい場合足関節戦略、支持面が不安定だったり、動揺が速かったりした場合に股関節戦略が使われます。

しかし、健常人からすると支持面が安定していたり、動揺が小さくても患者さんからするとそうは感じない場合も多々あります。起立を促しても前方に重心移動できず後方へ突っ張ってしなうなどはその典型例です。

そのため、個人の能力に対し、課題が難しい場合も股関節戦略が用いられます

 

また、未経験な場面や予測不可能な環境や課題の際にも股関節戦略が用いられます

脳卒中片麻痺の患者さんでいうと、今までの身体では経験していても、全ての動作が片麻痺の身体になってからは初めてということになります。

ただイスに座ることが我々でいう崖の端に座らされているような感覚になっていたりするかもしれません。

 

視覚が姿勢調整に与える影響についてはこちらの記事を参考にしてください

治療バリエーションの増やし方~視覚システムの治療応用~ 

2017.10.24

 

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