使える筋肉と使えない筋肉~筋トレの原理原則を解説します~

使える筋肉と使えない筋肉~筋トレの原理原則を解説します~

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理学療法士のhamako()です。

筋トレは、理学療法士や作業療法士の方はもちろん一般の方でも興味がある分野かと思います。

特にスポーツ分野では筋トレや筋力のことを考える上で良く「使える筋肉」「使えない筋肉」といった言葉を耳にすると思います。

「使える筋肉」「使えない筋肉」とはいったいどういうことなのか、どういう点に注意すれば使えない筋肉が使える筋肉になるのかを解説したいと思います。

筋トレ対する世間の認識

筋トレに対する世間の認識

スポーツ分野

筋トレに関してはスポーツの世界では賛否両論あります。

  • 筋力をつけると動きが遅くなる
  • 筋力をつけすぎると関節の可動域が狭くなる
  • 筋力をつけても実際のパフォーマンスに生かされない

などスポーツをしたことがある方なら1度は聞いたことある言葉ではないでしょうか?

最近ではダルビッシュ選手や大谷選手が肉体改造していることが注目され、またインターネットの普及により海外でのトレーニング方法も簡単に調べることができるので以前よりは筋トレに抵抗がなくなっている方も多いかと思います。

しかし、イチロー選手のように一流選手が筋トレを否定していることも事実です。

ダルビッシュ選手や大谷選手のような筋トレ賛成派とイチロー選手のような否定派が第一線で活躍できているのは事実なので、筋力だけで片付けられる問題ではないのかもしれませんし、ここではそこを結論付けることはもちろんできません。

しかし、筋力強化否定派の中には正しい筋力強化の知識なくして行い

  • 怪我をしてしまった
  • パフォーマンスが落ちた

といった方が少なからずいるはずです。

そのような方の筋トレに関する誤解を取り除いて正しい方法で行っていけばそれらのリスクは軽減できることを知っていただきたいと思います。

リハビリや健康増進分野

加齢や病気、ケガによる筋力低下などリハビリや健康増進の分野では、スポーツとは違い筋トレに関して否定する人はあまりいないように思います。

  • 転倒しないよう筋トレをしましょう
  • 膝の痛みを和らげるために筋トレをしましょう
  • 姿勢や歩き方を良くするために筋トレをしましょう

などなど。スポーツ分野に比べるとマイナスのイメージはあまり聞かれません。

しかし、自己流の自主訓練を行いすぎて痛みを増強する方もいらっしゃるので正しい筋トレの知識と方法は知って損はないと思います。

 

筋肉に対する中枢神経系の役割~筋肉は効果器であり感覚器官~

筋肉に対する中枢神経系の役割

「使える筋肉」と「使えない筋肉」を分ける理由は色々あるかと思いますが、中枢神経は大きく影響しているか要因の1つです。

中枢神経とは脳と脊髄のことを指し、その命令を基に筋肉が収縮といって伸び縮みします。また、伸び縮みしたという筋肉からの情報が脊髄を通り脳へ返っていきます。

中枢神経と筋肉との連携はテスト勉強に似ている

例えるなら、脳から筋肉への命令は「テストをするこがと自体」で、筋肉が伸び縮みしたという情報は「先生の添削」です。その添削をもとに、再度勉強し直しテストをする=筋肉に命令を出すということになります。

こうやって脳と筋肉の関係は洗練されていくのです。

しかし、テストをするばかりで添削をしなければどうでしょうか?自分のどこが悪いか、正解かが分からずテストの点数は上がらないのではないかと思います。

筋トレもこれと同じことで

  • 筋肉を使うこと
  • マシンを動かすこと
  • 重い重量を挙げること

いわゆる命令ばかりに注意が向いていると、代償動作といって本来狙いたい筋肉以外の場所が多く働いていたり、筋トレのフォームが崩れていたりしていても気づかず、それを続けても効果が上がりにくくなります。代償動作を行い続けることで負担が集中し怪我に繋がるといったことが起こるかもしれません。

「筋肉のどこを使っているか意識して!」

と良く言われるのはそのためです。

  • 鍛えたい筋肉を鍛えれているのか
  • 自分が命令した通りに筋肉が反応してくれたか
  • 筋トレ中にもバランスが安定しているか
  • フォームは崩れていないか

など感覚に注意を向けることが重要となります。

競技では重量上げ以外は筋トレの内容をそのまま行うことはほとんどないのではないかと思います。つまり、競技を行う際には命令通りに身体が動いて、その時にいつもより多くの力が発揮出きたかということが重要となります。これが使える筋肉となります。

競技特性により、力の使い方が異なりますのでそれに合わせた筋トレが必要です。

 

中枢神経はドライバー、筋肉は車体

ペーパードライバーがスーパーカーに乗っても運転しきれませんし、F1レーサーが軽4に乗っても本来の能力は発揮できません。

  • ドライバー=中枢神経
  • 車体の排気量=筋肉・筋力・パワー

このバランスが整うと使える筋肉となり、バランスが崩れると使えない筋肉になるということです。

 

筋トレの原則

筋トレの原則

筋トレには基本的な原則が存在します。これらを守って筋力強化を行うことで

  • 筋トレの効果得られない
  • 怪我をしてしまう

など誤った判断を行う可能性は低くなります。

過負荷の原則

目的とする効果(筋肥大・筋力・パワー向上など)を得るためには日常生活でかかっている慣れている負荷量よりも大きな負荷をかける(過負荷)必要があることをいいます。例えば、高齢の方で寝てばかりいて運動不足の方は普段がそのような日常生活を送られているので、外に出るだけやウォーキングをするだけでも日常生活よりも負荷がかかり筋力はアップするかもしれません。

しかし、ほとんどの方がその程度の運動では筋力はアップしないことが考えられます。

 

例えば、習慣的に筋トレをしていて週3回スクワット30kgの重量で5回×3セット行っている方がいるとします。最初はこのメニューが適度だったかもしれませんが、段々慣れてきて週3回定期的に行っていると日常生活でかかっている負荷量ということになります。

この方の筋トレを効果を高めたいと考えるならば、

  • 重量
  • 回数
  • セット数
  • インターバル時間
  • トレーニング期間
  • 難易度
  • 動かす範囲
  • 動かすスピード

などの数値を上げる変動させる必要があります。これで現状の身体からすると過負荷となり筋トレの効果が得られやすくなります。

しかし、どのパラメーターを変動させるべきかは目的により異なります。

例えば最大筋力を向上したい、筋肥大を狙いたいという場合に回数を上げるのは過負荷にはなりますが目的が筋力アップではなく筋持久力アップを目的とした負荷量の上げ方になります。

慣れてくると新しい刺激を加えて上げることが重要だが、負荷の種類についても考える必要がある

 

漸進性の原則

漸進性とは「順を追って少しずつ進んでいくこと」です。筋トレで考えると普段筋トレの習慣がない方がいきなり重い負荷量で行うのは適切ではないですし、筋トレをしている方はいつも同じ負荷量で行うことでは筋トレの効果が上がりにくいことを指しています。

過負荷の原則にも従い、自分の今の現状よりも負荷量を少し増やしていくことが筋トレの効果を最大限に高めていく秘訣となります。

超回復

筋トレにより筋肉は微細損傷を受けます。その回復のために休養時間が必要です。その時間は48~72時間と言われており、その時間内に同一箇所を筋トレするのは筋肉を損傷する可能性が高まるので避けた方が良いです(例えば肘を曲げる上腕二頭筋の筋トレを毎日行うなど)。

もちろん休養に加えて栄養補給も重要な要素となってきます。

 

使える筋肉にするには特異性の原則を知っておく

特異性の原則とは、同類の運動を用いたトレーニングによって効果が高められるといった原則です。

筋の収縮様式からみた特異性

どういうことかと言えば、

膝を伸ばす筋肉を鍛えたい場合、座ってふとももが動かないように膝を伸ばします。この時にはふとともの前側の筋肉である大腿四頭筋の求心性収縮(筋肉と端と端が近づこうとする収縮)が生じています。

しかし、そこからゆっくり降ろしていく際にも大腿四頭筋に力がはいっていると思います。これを遠心性収縮(筋肉の地端と端が離れる)といいます。

その他関節の動きが入らずその場で力が入る等尺性収縮というものがあります。

自分が改善したいと思っている動作で鍛えたい筋肉・部位がどの収縮様式なのかを考えトレーニングすることで使える筋肉になりやすいという原則です。

ただ、その収縮様式でなければ全く使えないという話ではなく、より効率的という話です。

動作様式からみた特異性

例えば、先程の膝を伸ばすトレーニングとスクワットどちらも大腿四頭筋の収縮が必要になります。

しかし、体幹・股関節が止まり足先の方が動くのか、足が固定されそれより中心に近い股関節や体幹(胴体)が動くのかといった違いがあります。

足先の方が動く運動をOpen kinetic chain:OKCといい、スクワットなどの運動をClosed kinetic chain:CKCといいます。CKCに関しては、手や足などの末端関節が外部抵抗と接触している状態と定義されているものもあるので、

例えば

  • ショッピングカートを押す
  • 野球ボールを投げる
  • サッカーボールを蹴る
  • 水泳で水を掻く

などもCKC考え方によっては分類されると考えられます。

目的とする動作がどういう動作様式なのかを考え、それに応じた方法でトレーニングすることが効率が良いとされています。

 

複合関節動作

上述した座っていて膝を伸ばす運動はOKCもしくは単関節動作といったりもします。それに対してスクワットなどはCKCもしくは複合関節動作ともいいます。

単関節動作(OKC)は大腿四頭筋がメインに働くのに対し、複合関節動作(CKC)は足首・膝・股関節・体幹に関する筋肉が協調的に全身性に働くのが特徴です。

 

単関節動作(OKC)では大腿四頭筋が強く働く場合、それに拮抗するハムストリングスは大腿四頭筋の動きを邪魔しないようにする必要があります。

しかし、複合関節動作(CKC)ではそれに拮抗するハムストリングスもある程度働く必要があります。ハムストリングスは膝を曲げる役割があるとともに股関節の伸ばす働きがあります。スクワットでは前かがみになると前へ転ばないように背中やお尻側の筋肉が働くことになるのですが、ハムストリングスはその役割も担っていることになります。

また、複合関節動作(CKC)では末端からの動きを股関節・体幹などの中心部に伝達していくことが必要ですので2つの関節をまたいでいるハムストリングスは伝達の役割も担っているということになります。

このように、色々な筋肉が協調して働くのが複合関節動作(CKC)の特徴になりますので、使える筋肉という視点で考えると複合関節動作がパフォーマンスには繋がりやすいと考えられています。

 

しかし、ボディビルディングのようにこの筋肉を特化して鍛えたい場合、身体的な左右差が大きく一側を強化したい場合、膝の前十字靭帯のリハビリテーション初期のように膝周囲の筋肉だけ単独で鍛えたいという場合などは単関節動作(OKC)での筋トレが適切です。

バイラテラルトレーニングとユニラテラルトレーニング

筋トレの種目には

  • バーベルなど両側の筋肉を同時に活動させるもの(バイラテラル)
  • ダンベルなど片側ずつ行うもの(ユニラテラル)

があります。

ユニラテラルは個々の筋肉を集中的に強化できるという特徴があります。そのため、ボディビルディングやリハビリテーション、片側の腕や脚による筋力やパワー発揮が重要となる競技に関して有用であると考えられます。

しかし、ユニラテラルトレーニングには片側ずつのトレーニングにはバイラテラルフィシット(両側性欠損)と呼ばれるデメリットも存在します。

Secherら(1975)らによると、一般人ではレッグプレスにおいて片側の筋力を合計した値に比べ、両側での筋力は約70%にしかならないことが示されています。

つまり、片側ばかりのトレーニングを行っていると両側性で筋力を発揮しようとした際への影響が少ないことが考えられます。これがバイラテラルフィシットです。

自分が求めたい動作が両側動作の場合、片側ずつ筋力強化を行うことは理にかなっていないことが分かります。

 

筋トレの効果の現れ方

筋トレの効果の現れ方には大きく分けて神経的要因と筋肥大とあります。

神経的要因

強い力を発揮する際、通常神経は抑制といって強い力が働きすぎないように制御しています。しかし、筋トレによってその抑制の効果を減らして、多くの命令が筋肉に届きやすくなります。その他にも神経の命令の足並(タイミング)が揃ったり、命令の量が増加することで筋力を発揮しやすくなります。これが筋トレの効果の神経的要因です。

これは筋トレを始めた初期に認められる現象です。例えばマシンやバーベルなどで1ヶ月以内に重い負荷で行えるようになる要因はこの神経的要因となります。

この神経的要因は体重制のスポーツ(柔道やレスリング、競馬の騎手など)や体重増加が不利に働くスポーツでは特に有用となります。

しかし、最終的な筋力の上限は筋断面積(筋肉の太さ)に依存します。この神経的要因での筋力アップは多くても20~30%と言われていますので、それ以上の筋力アップを目指したい場合には筋を肥大(筋肉を太くする)させる必要があります。

筋肥大

筋肥大とは筋肉自体が太くなることです。筋肥大は筋トレをしてすぐには現れません。4週間頃から少しずつ筋肥大の影響が現れ、9~10週間頃には神経的要因よりも筋肥大の影響が大きくなります。

つまり、筋肥大を狙うと平均3ヶ月程度は必要ということです。

一般的に

  • 高強度・低容量(回数少)の筋トレ☞神経系の適応を引き出す上で高い効果
  • 中~高強度・高容量(回数多)の筋トレ☞筋を肥大するのに高い効果 
     
    があると言われています。

筋トレの効果判定

筋トレの効果判定

筋トレの効果を何をもって良しとするのは難しいところです。

  • スポーツなどのパフォーマンスが上がれば
  • 筋肉のボリュームが増えれば(見た目・周径など)

など人によっても捉え方が違うと思います。

スポーツの場合は、筋トレがそのまま早期にパフォーマンスに繋がるかは未知数で、逆にすぐに効果が出ないとトレーニング方法が間違っていたと解釈されてしまうことが多いように思います。

スポーツ分野に生かすためには、筋トレの効果をスポーツに繋げる別のトレーニングが必ず必要になってくるのを忘れないようにしましょう。

筋トレの効果測定にはいくつかあります。

筋力の効果判定

  1. 例えばスクワットやマシンで1回だけ可能な最大の重量の測定(1RM(1-repitition maximum)の測定といいます)
  2. 背筋計や握力計など(等尺性随意最大筋力の測定といいます)
  3. 等速性筋力の測定=サイベックスやバイオデックスなどの等速性筋力計

などがあります。一般のスポーツ場面や医療場面では1~2が用いられることが多いです。

3のサイベックスやバイオデックスは機器が高価なこともあり、特定の病院や施設に行かないと測定できないことや対象とする筋肉や動作が限られてしまうこともあり、研究や特定の場面以外は使用することは少ないのです。

 

筋肥大の効果判定

筋力の大小を決める最も大きな要因は前述したとおり筋断面積です。

筋断面積を測定する簡易的な方法は、周径を計測することです。

  • 常に同じ位置の周径を計ること
  • 皮下脂肪の厚さに変化がないこと

この2条件を満たせば、屈筋と伸筋のサイズを評価する指標として使えると思います。

もし、特定の筋肉や体幹の筋肉について計測したい場合には超音波やMRIなど特別な装置が必要になります。

 

まとめ

使える筋肉と使えない筋肉の違いについて解説しました。

使える筋肉にするためには

  • 鍛えている筋肉を意識する
  • 筋トレ中のフォームや代償動作に注意する
  • 筋トレの原則(過負荷・漸進性・超回復)を守る
  • 特異性の原則を考えて行う(目的とする動作に合っているかどうか)
  • 筋力アップには神経的要因と筋肥大の要因とある
  • 大きな筋力アップを狙うには筋を肥大させなければならない

 

一般的に汎用性の高いトレーニングとしては

  • 両側性の動作(スクワットやバーベルなど)
  • 複合関節動作

が挙げられます。

競技特性などの分析には専門的な知識が必要となります。

一般的な競技はほとんどこの2つに当てはまるかと思いますので、怪我明けや特殊な競技以外の方は、入口としてこの2つを守りながら筋トレするのが良いかと思います。

 

参考書籍

 

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