治療バリエーションの増やし方~ダイナミックタッチの治療への応用~

ダイナミックタッチ 治療への応用方法

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理学療法士のhamako()です。

前回のアフォーダンスの記事では物や環境が我々に与える情報について考えました。

では、その物を使いこなすためにはどういう能力が必要だろうか。

物を上手く使いこなすためにはダイナミックタッチといわれる能力が必要となります。

今回はダイナミックタッチについての理解を深めその知識を治療場面に生かす方法をご提案できればと思います。

ダイナミックタッチをイメージする

ダイナミックタッチとはさわったり、振ったり、押したり、たたいたりして物の変わらない性質をあらわにしているあらゆる動きのこと  

                       引用元:佐々木正人 アフォーダンス入門~知性はどこに生まれるか~ 講談社学術文庫

分かったようでわからない(笑)

例えば棒を上記のようにさわったり振ったりしてみると、棒の長さや重さ、重心位置などを知覚できる。じっと持っているだけではなく、動かすことにより正確に知覚できる。

この方がイメージしやすいかな。

ダイナミックタッチの説明の「物の変わらない性質」とは慣性モーメントのことを指している。

慣性モーメントとは外から加えられた力に抗して、回り続けようあるいは止まり続けようとする、物に備わる性質である。物の性質でありながら、動きを加えないとあらわれてこない性質である。この値は棒が同じである限り変わらない。

                       引用元:佐々木正人 アフォーダンス入門~知性はどこに生まれるか~ 講談社学術文庫

つまり物から情報を得るためには動かしたり力を加えることが必要ということです。

道具を使うスポーツ、例えば野球であれば、バットを振りバットの重さや長さ、重心位置などの情報を基に「どこまでバットが届くか」「どう振れば速く振れるか」ということ身体に学習させる。じっとバットを持っているだけではバットを思い通りに扱うことはできませんよね。

物を扱う場面だけでなく身体でも同じことが言えると思います。

生まれたての赤ちゃんは手足を良く振ってバタバタさせている。これも身体の境界を知覚しようとする(自分の手足の長さを知覚)ダイナミックタッチであると考えられる。これで物や環境と身体との距離感を学習させていきます(身体図式の形成)。

少し小難しい話になってしまいました(^^;)ダイナミックタッチはそんな小難しいことではなく、我々が常日頃行っていることです。しかし、当たり前のことすぎてあまり意識しないことなので気づかないだけだと思います。

現在、ペンを通して字を書くのもダイナミックタッチだし、スプーンを使ってカレーをすくうのもダイナミックタッチです。イスの上に座っておけるのもイスを通して地面を捉えるダイナミックタッチです。

しかし、脳卒中の患者さんなどは非麻痺側であっても肩を上げ、力を入れて字を書いたり、スプーンでうまくすくうことができないので顎を突き出し体幹を屈曲させ食事をします。座位では座面やそのイスの下の地面を捉えれず姿勢が崩れしている方も少なくないです。

健常人にとっては当たり前で気づかないことでも患者さんと比較するとダイナミックタッチの重要性が少しイメージしやすいのではないかと思います。

 

ダイナミックタッチの治療場面への応用方法

ダイナミックタッチは患者さんの身体を触るや誘導する際にも重要になります。臨床でどのように利用するのかを具体例をあげて説明しようと思います。

患者さんの移乗や歩行の誘導や介助

動作の介助をうまく行うのにもダイナミックタッチの能力は大切です。
移乗でいえば誘導が上手な人は胸郭を持ちながらも立つ直前に足底に体重がのった感じを捉えて誘導します。
誘導が下手な人は力をまかせに身体がどうなっているかを捉えようとせずに動かすことばかり考えています。無理矢理力まかせに行うので上手そうには見えません。

上手な人ほどこのダイナミックタッチをうまく感じとれているため不必要な力を使わず介助することができるので軽く介助しているように見えるのです。歩行も同じく胸郭や骨盤、上肢を持ちながらも対象者の身体を通して地面の状況を探りながら行うことが大切です。

 

対象部位が接触部位より深部の場合の治療

対象部位が深部で直接触れない場合表面の場所を介して治療を行います。筋肉も浅い部分にあるものもあれば骨に近い部分のものもあります。特に深部などは厳密には直接ではなく浅い筋肉を介して触れることになります。

また、分かりやすい典型例が股関節で、股関節はどう頑張っても関節を触ることはできません。大転子や大腿骨、骨盤を介して関節包内運動の状況を探ったりします。対象部位の感触を感じとるのもダイナミックタッチです。
遠隔的に股関節包内運動の状況を捉えれないと、股関節のROMEXは関節包内運動を無視して大腿を押すということになります。骨盤が今動き始めたなど触診での代償運動の評価は行えず、視覚的に確認することしかできなくなります。

 

片麻痺患者さんの歩行

感覚障害が重度の方でも歩行が行えるのはまさにこのダイナミックタッチの能力です。

感覚障害があり足底の触覚が失われていてもダイナミックタッチで地面の感触を探ることは可能です。例えば、ペンで字を書く時ペン先には感覚受容器はありませんよね?でもテーブルや紙の材質を間接的にペンを介して身体で捉え字を書くことができます。

感覚障害で体重をかけるのもそれと同じ理屈です。もちろん膝が折れたらペンが途中で折れてるのと同じですからうまく地面の感触を探ることはできません。体重がかかった時(厳密にはのる少し前)に下肢全体が剛体になっていれば感触(地面からの床反力情報)を得て歩くことは可能です。

もちろん同じ剛体でも膝をロッキングするより筋活動で制御できて物体としての固さを確保できる方が良いことは言うまでもありません。

 

患者さんのダイナミックタッチ

自身の身体では立位や歩行時に地面を捉えること、寝返りや起き上がりの時には支持面を捉えて身体を動かすこと。支持物の安定を探ること(引くではなく押すことで安定しているか確認できる)。

これら支持面や支持物を探るために必要な身体機能は

  • 身体が剛体であること(良いアライメントや良い筋緊張)
  • 剛体でありながらも自由度があること(固定ではなく安定:歩くためには膝折れよりはロッキングが良いがコントロールされてしっかりしている膝が一番良い)
  • バランスが安定し四肢が自由であること(地面や支持物の安定を探る際、四肢を動かす度に1回1回バランスを崩していては探索にならないので)

抽象的な表現ですが、これくらいの方がイメージしやすいかと思います。しにくかったらすいませんm(__)m

またOT 場面では患者さん自身にダイナミックタッチで物品操作やADL、IADL  練習をしていただきます。例えば調理訓練での包丁操作などがそうだと思います。

まとめ

  • 物や環境の情報を得るためには触る、振る、叩く、押すなどのダイナミックタッチの情報が必要
  • 治療者は患者さんの身体をダイナミックタッチで捉え治療したり、誘導したりする
  • 治療者にも患者さんにもダイナミックタッチの能力は必要

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